2015年6月、私はニュージーランドへ移住しました。
50歳を目前にした頃のことです。
かつて暮らしたイタリアも遠い国でしたが、今度は南半球。
日本から約1万キロも離れた、南極に近い国です。
ずいぶん遠くまで来てしまったものです。
6月のニュージーランドは冬のはじまり。
日本ではそろそろ夏を迎える頃なのに、こちらはこれから寒くなるという。
頭ではわかっていても、なんだか妙な気分です。
おまけに、太陽は北の空を通っていく。
日本では南からの日差しが当たり前だったのに、こちらでは北からの日差しがありがたい。
地球の反対側まで来ると、当たり前だったことまでひっくり返ってしまうようです。

そして、ニュージーランドで新しく始めたのが海釣りでした。
子供の頃は川釣りをしていましたが、海釣りはずっとやってみたかったことの一つ。
日本ではなかなか機会がありませんでしたね。
ところが、ニュージーランドでは海がすぐ身近にある。
そこで始めたのが、我が家のおかずを調達するためのアジ釣りです。
釣りをしていると、現地の人からよく声をかけられました。
「何を釣ってるんだい?」
「アジだよ。」
「アジ? そりゃ魚の餌じゃないか!」
どうやら、彼らのお目当てはスナッパー(鯛)やキングフィッシュ(ヒラマサ)。
こちらは今晩のおかずを釣っているというのに、向こうはその餌を釣っていると思っている。
同じ海を眺めながら、ずいぶん違うことを考えていたものです。
もっとも、釣りに出かけるのは、魚を釣るためだけではありませんでした。
何か考え事があると、よく海へ出かけたものです。
竿を出して、ぼーっと海を眺める。
特に釣れない日は、考え事をするにはもってこいです。
そんなとき、ふと空からアイデアが降ってくることがあります。
不思議なもので、そういう日に限って、魚はちっとも釣れない。